英語を勉強するのに小説を読むのは大変効果的です。不朽の名作の原書で英語の勉強をしてみたい人は多いのではないでしょうか。
なかでもルーシー・モード・モンゴメリの「赤毛のアンは」日本でも有名ですよね。
遅ればせながら最近私も「赤毛のアン」の原作を読み始めました。これが結構面白い。子育ての経験が無いマリラと、孤児として育ったアンの不思議なやりとりなど、魅力たっぷりで、男の私でも夢中になってしまいました。
小説自体はとても面白く、おすすめですが、英語学習という点ではどうなのでしょう。
というのも、この本の出版年は1908年、今から100年以上前です。本の中で使われている英語は現代でも通用するのでしょうか。
「赤毛のアン」で英語を勉強すると、知らず知らずのうちに、古臭い表現を学んでしまうかもしれません。
ちなみに「赤毛のアン」と同時期に日本で出版された本は、例えば、夏目漱石の「吾輩は猫である」で、これは1905年出版です。読んだことがある人ならわかりますが、難しい漢字で書かれていたり、聞き慣れない古風な表現が使われていて、現代の日本語とはちょっと雰囲気がちがいます。
「赤毛のアン」はどうなのでしょう?
私の妻のルーシーはアメリカ人なので、彼女に読ませて感想を聞いてみました。
私が読んでみました。
「赤毛のアン」の25%ぐらいは古風な表現
はたして「赤毛のアン」の英語にたいして現代のアメリカ人はどう感じるのか、ルーシーに、原作の最初の10ページを読んでもらい、その感想を聞きました。
彼女が赤毛のアンを読むのはこれが初めてです。有名な作品なので、知ってはいたが、読んだことはないそうです。
どうだった?
そうね。読みやすいんだけど、ちょっと表現が古風な部分があったりするわね。
ルーシーが言うには、赤毛のアンにはやはりちょっと古風な表現が使われているようです。感覚として25%くらいはちょっと古い表現だと言うことです。
古風な表現、というと、現代人からしたら奇妙に感じる表現なの?スターウォーズのヨーダがしゃべっているのを聞いた時のような違和感を感じる?
いえ、そんな極端な違和感は感じないわ。ただ、ちょっと古めかしい感じなだけよ。
日本語で言う、「〜でござる」とか、「〜で候」みないな感じなのかというと、そんなに古臭くはないようです。
「吾輩は猫である」を読んでいるのに近い感覚なのではないでしょうか。
つまり、現代人でも問題なく読めるが、どことなくちょっと古風な感じ、と言うことです。出てくる単語も基本的に簡単でわかりやすいけど、使い方がちょっと古めかしかったり、現代ではあまり使わない単語が多少でてくる、と言っています。
全く知らない単語も少なからず出てきた、とも言っています。
しかし、75%は現代に書かれた小説と変わらない雰囲気だと言います。
「赤毛のアン」は英語学習者におすすめできる小説か?
というわけで、「赤毛のアン」は現代英語と比べるとちょっと古風な表現で書かれているようです。
もし、純粋に英語学習を目的としていて、現代の英語表現を学びたいのなら、「赤毛のアン」よりは、ハリーポッターなど、より新しい小説の方が適切でしょう。
しかし、現代英語にこだわらなければ、「赤毛のアン」は英語学習のための読み物としてそんなに悪いわけではありません。ルーシーが言うように、75%くらいは現代英語と変わりません。その他の25%もちょっと表現が古風なだけで、しかも文の構造は現代文とほとんど変わりません。
じつは、私も最近「赤毛のアン」を読み始めたのですが、わたしが非ネイティブなせいか、現代英語との表現の違いにほとんど気づきませんでした。
形容詞っぽい単語が副詞のように使われていたりして、ちょっと面白いな、と思ったところがあったくらいです。多少つまずく場所はありますが、基本的にはスラスラ読めます。
赤毛のアンと英語学習者の関係は、吾輩は猫であると日本語学習者の関係と同じかと思います。もし、日本語を学んでいる人に適当な日本語の小説のおすすめを聞かれたらどうでしょうか。
「吾輩は猫である」をあえて勧めたりはしないが、面白いと思うなら読んで損はないよ、と言うのではないでしょうか。
「赤毛のアン」を英語学習として使う時の注意点:
- 「赤毛のアン」で使われている英語表現はちょっと古風
- 現代英語を学びたいのなら、現代の小説の方がおすすめ
- とはいえ、「赤毛のアン」全くだめというわけではなく、内容が面白いと思うなら読んで損はない。
「赤毛のアン」の感想をくれたアメリカ人のスペック
と言うわけで、アメリカ人のルーシーに「赤毛のアン」の感想を話してもらったのですが、アメリカ人にもさまざまな人がいます。高校を卒業したばかりで、読書など全くしない人と、英文学で博士号を取得した人では同じ本を読んでも違う感想を持つことでしょう。
そこで、「赤毛のアン」を読んでもらったアメリカ人のルーシーについてここで簡単に紹介しておきます。
「赤毛のアン」を読んでくれたルーシーのスペック
- 生まれも育ちもミシガン、英語以外の言語を知らない41歳のアメリカ人。
- 4年生大学卒、専攻は金融。
- 「赤毛のアン」を読むのは今回が初めて。有名な小説なので、名前は知っていた
- 結構な読書家。愛読書はトワイライト、Fifty Shades of Gray、ハリーポッターなど、ファンタジー+恋愛小説。ビジネス書もたまに読んでいる。
- 私が頼んで受けてもらったTOEICは初受験で満点の990点
という感じです。ネイティブ並みを目指す英語学習者が目標とするネイティブ像に近いのではないでしょうか。
ちなみに、ルーシーのTOEIC受験に関してはこちらに記事があります。
「赤毛のアン」の中の古風な英語表現の例
ルーシーには原作の最初の10ページを読んでもらい、現代英語とはちょっと違うな、と思う場所を取り上げてもらいました。
では、私がちょっと古風な表現だな、と思った部分を引用してみるわね。
黄色いハイライトの部分はルーシーが古風な表現と感じた場所。赤いハイライトの部分はルーシーが知らなかった単語です。
“There are plenty of people…, who can attend closely to their neighbor’s business by dint of neglecting their own…”
訳: 自分の用事を疎かにしてまでご近所の人の事に首を突っ込む人が沢山いる。
Excerpt From: L.M. Montgomery. “Anne of Green Gables.”
まず、”Attend closely”だけど、現代英語ではAttendはこの文脈ではあまり使わないわね。
それと、”Dint”という単語は初めてきいたわ。
へぇ、ネイティブでも知らない単語があるんだね。
Yet with all this Mrs. Rachel found abundant time to sit for hours at her kitchen window, knitting “cotton warp” quilts—…
訳: しかしそれでもなおレイチェル夫人は何時間も台所の窓のそばの椅子に座り、Cotton warp キルトを編み続ける時間を見つけることができた。
Excerpt From: L.M. Montgomery. “Anne of Green Gables.”
Cotton warp quiltがどんなキルトだかわからない。
“…she had knitted sixteen of them, as Avonlea housekeepers were wont to tell in awed voices…”
訳: 彼女はそれらを16個も編み上げ、アボンリーの主婦たちはそれをいつものように尊敬の念をもって話し合った。
Excerpt From: L.M. Montgomery. “Anne of Green Gables.”
Wontは古風ね。現在ではあまり使わないわ。
“…moreover, he wore a white collar and his best suit of clothes, … and he had the buggy and the sorrel mare, which betokened that he was going a considerable distance.”
訳: その上、彼は白い襟の服と彼の持つ最良のスーツを着ていた。そして彼は栗毛色の雌馬が引いた馬車に乗っていた。それは彼がかなり遠くへ出かけることを示唆していた。
Excerpt From: L.M. Montgomery. “Anne of Green Gables.”
SorrelもBetokenも知らない単語よ。
“One could have eaten a meal off the ground without over-brimming the proverbial peck of dirt.”
訳: よく知られた泥の山を溢れさせることなくその地べたから食事ができるであろう。
Excerpt From: L.M. Montgomery. “Anne of Green Gables.”
Over-brimmingもPeckも知らない単語で、結局黄色でハイライトされた部分は意味がわからないわ。
うん、日本語に訳してみたけどよく意味がわからないね。文の前後関係から推測すると、あまりに綺麗に掃除しているので地べたで飯が食える、という比喩表現なんだろうけど、
その他、具体的にはあげませんが、この小説の文章全体はほのか〜に表現が古風、とのことです。
というわけで、最初の10ページだけでもこれだけ古い表現や、生粋のアメリカ人で、TOEICで満点を取るような人でもわからない単語がかなり出てきました。
「赤毛のアン」を読んでいて、知らない単語に多く出くわしても、それはあなたの勉強不足のせいではないかもしれません。この本には、ネイティブですら知らない単語がでてくるのですから。
赤毛のアンはApple Booksならタダで読める
ちなみに私は今回「赤毛のアン」の原書をApple Booksで入手しました。
購入する気まんまんでApple Booksを開いて「Ann of Green Gables」を検索すると、
なんとタダでした!
ラッキー
どうも古い作品の中にはタダで読めるものがあるようです。皆さんもお試しください。
関連記事: ギルバートがアンをからかった時の人参が複数形の理由
まとめ
というわけで、いかがだったでしょうか。本記事が「赤毛のアン」を英語学習のために読むことを検討している人のお役に立てたなら幸いです。
最後にまとめます。
- 赤毛のアンには古風な表現が使われている。
- 現代英語を学ぶのが目的ならハリーポッターなど、最近書かれた小説を読むべき。
- しかし、「赤毛のアン」自体は現代の小説に比べて特に読解が難しいわけではない
- 小説の内容が気に入ったなら、読んでみても良い。古風な表現があるとは言え、75%は現代英語と変わらないし、特別変な文法が使われているというわけではない。
最後までお読みいただきありがとうございます。コメントを残していただければ作者が喜びます。
コメント
こう言うとLucyさんに失礼になるかもしれないけど、読書を子供のころからあまりしなかったか、ジャンルが偏っていた可能性もあるような。ごめんなさいね。よく言えば今風の人的な感じがしました。今は日本人もそういう人いっぱいいますからね。例えば、without over-brimmingですがBrimはツボなどの口の縁のことですね。これから考えれば、こぼさずにという意味がわかると思うのですが。じつはこの単語(over-brimming)は各種Fairytalesで頻出の単語です。sorrelなんかも良く出てきます。Anne of Green Gablesはわたしも読みました。当時のオリジナルの英語版です。お話は面白いけど、英語に癖があって嫌いです。カンマで区切って直接関係がない内容、或いは仮定した場合の予想される結論などがつらつらと書いてあって、非常に読みにくいと感じました。
Keisukeさん、
コメント有難うございます。Over-brimmingはFairly tailでは搬出なのですね。Lucyはたしかにあまりその類は読んでいないかもしれません。
ネイティブでも結構わからない単語があるのがおもしろいです。
ご丁寧にコメントを頂きありがとうございます。差し出がましいかもしれませんが、もしゆずピザ様がFairytale的なものがお好きでしたら、おロシアのものはいかがでしょうか。とりあえずのおすすめがあります。
ISBN-10 : 5938938988
ISBN-10 : 5966301433
ですが、ロシアのものってあまり読まないと思うし、世界観が変わっていて興味深いです。またRussian Lacquer Miniatureの挿絵が素晴らしいです(英訳が変な部分があったりしますが、気になる程ではないです。)。
Keisukeさん、
本のおすすめ有難うございます。ロシアのFairytaleですか、面白そうですね。今度調べて読んでみますね。